今月の農作業(12月)柑橘
JAありだ営農指導課
有田みかんについて思うこと
今年のみかんの出来栄えはどうでしょうか?納得のいくみかんができた人もいれば、そうでない人もいるかと思います。
秋期は多雨傾向で間違いない
【図 降水量の推移】
今年は着果量が少ない上に、梅雨が長引いたことや8月中旬の台風以降に降雨が多かったことにより品質が上がりにくい状況でした。近年は9月の降水量が多い傾向にありますが今年は平年の約半分と少なく、品質は少し回復したものの、全体的には品質が低い園地が多くなり、特に極早生温州はその影響を大きく受けました。
極早生栽培の難しさ
花が咲いてから収穫までの期間が短い極早生温州は、今年のような7・8月に雨の多い天候では、低下している品質を元に回復するまでの期間が短すぎます。そのため、マルチ被覆園地を除き、低品質のまま収穫期を迎えてしまう園地が多く、販売面でも苦戦を強いられました。
極早生温州の栽培は、非常に難しいと言えます。なぜなら限られた短い期間の中でまず、糖度を上げる必要があります。次に果実を肥大させ階級を作り、さらに、着色を良くし、酸を下げなければなりません。これらの条件を収穫までの期間が短い中でクリアすることは至難の技で、それを実現するためにはとても時間と労力がかかってしまっているのが現状です。
極早生栽培による早生以降品種への影響
10月に入ると極早生温州の本格的な収穫時期となり、摘果どころではなくなることから、早生温州以降の仕上げ摘果を行う時間が少なくなってしまう方が多いと思います。
しかし、この時期は果実の肥大が鈍り、摘果を行えば品質が簡単に向上しやすい時期であるため、この時期からの摘果が非常に重要です。特に今年は肥大の良い果実が目立っている状況でこのタイミングからの摘果はとても有効であったと思います。
また、前述のように極早生温州が多すぎると、仕上げ摘果が実施できず摘果量が不十分となり、収穫時点での着果量が多過ぎ、隔年結果にも影響を及ぼします。近年は品質に加え、安定した量を生産することも重要となってきています。
10月に収穫に追われるか、少しでも摘果を行えるか、わずかな差のように思いますが、今年の品質と来年の着果量のことを考えるとその差は大きいといえます。
「有田みかん」にとって極早生は大事!?
極早生温州を全否定するわけではありません。労力配分など絶対になくてはならない存在です。しかし、その割合が大きくなり過ぎることや、それにかかる時間や労力が増え過ぎることは、早生以降の高品質の果実を作る上では悪い影響を及ぼしているといえます。果実品質から証明されているように、昔も今も有田は早生以降の産地です。極早生温州の後にくる本当に大事なものをもっと大切にする必要があるのではないでしょうか?それが「有田みかん」のブランドを維持していくことに繋がっていくと思います。
環境に対応した栽培管理・工夫により「有田みかん」ブランドを守ろう!
近年は、春期の乾燥や秋期の温暖多雨などの天候の変化により、年々品質の高いみかんを生産することは難しくなってきています。従来の栽培方法に過去の記事で紹介したような工夫を加えていく必要があります。また、来年は着果量が多くなることが予想されます。今年は樹1本あたりの収穫量が多くなったとしても来年の着果量は確保できているため、多少の摘果不足でも許される年です。しかし、来年はそうはいきません。来年に摘果を十分に行えないとまた大きな隔年結果に陥ってしまいます。
事前の対策として秋肥の適期施用や花芽抑制のジベレリン散布を行えば着花過多になるのを軽減する方向に働きます。そういった次年度のことも踏まえて今後の農作業に取り組んで下さい。
カイガラムシ類の防除
近年、秋の温暖な気候によって収穫時期のカイガラムシ類の発生が多くなっています。12月下旬から1月中旬までの暖かい日にマシン油乳剤95%を45倍、またはマシン油乳剤97%の60倍を散布して下さい。しかし、この時期のマシン油の散布は花芽分化にマイナスの影響を及ぼします。来年の花芽が少ないと予想される園地や樹勢の低下している園地は3月中下旬から発芽前までにマシン油乳剤97%の60倍を丁寧に散布して下さい。
(イセリヤカイガラムシ写真)
花芽抑制による樹勢の維持
今年の着果量が極端に少なかった園地は来年の着花量が多いことが予想されます。着花量が多くなると樹勢の低下を招くおそれがありますので、花芽の抑制を目的として温州みかんで11月~1月(但し収穫後)にジベレリン協和液剤2000倍+マシン油乳剤60倍~80倍を散布して下さい。摘蕾・摘果作業の省力化にもつながります。また、ジベレリンは葉からの移行性がないため、散布の際は枝梢を中心に丁寧に散布して下さい。