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今月の農作業(8月)柑橘・キウイフルーツ

更新:2021年7月30日

柑橘

8月は、果実品質を左右する時期に当たります。果実肥大期とも呼ばれ、果径は日増しに大きくなります。主な作業は、水分管理やマルチ被覆、摘果などが挙げられます。

品質とストレスについて

高品質の果実を生産する上で、水分ストレスや着果ストレスは大きな役割を果たします。

着果ストレス

樹上に果実を着果させることで付与されるストレスです。着果量が多くなると、肥大が抑えられるとともに、果梗部が細く下垂しやすくなり、品質の良い果実になります。

水分ストレス

乾燥状態になることで付与されるストレスです。乾燥させることで、果汁内の糖の蓄積が増え、果実品質が向上します。マルチ被覆やフィガロン乳剤の散布により、人為的に水分ストレスを与えることができます。

品質向上対策(1)

水分管理(例:早生)

ミカンは、 7月以降の水分管理が重要になります。図1を参考に、時期別の水分管理を心掛けましょう。

  1. 第一期(7月下旬~8月下旬)
    新梢が緑化し、旧葉とともに光合成生産物(糖分)を盛んに果実に送り込む時期になります。最終的な糖度に影響を及ぼすため、乾燥させた初期の糖度を高め ることが重要です。ただし、過乾燥は光合成能力を弱め、細根を枯らし、樹勢や品質の低下を招くため注意してください。明け方に葉が巻いた状態のままであれ ば、10aあたり10mm程度の灌水を行ってください。

  2. 第二期(8月下旬~9月中旬)
    この時期は、クエン酸の分解が始まるので酸度が急減します。この時期に乾燥させてしまうと、果実肥大が鈍るとともに、クエン酸の分解が進まないため、小 玉や酸高の原因となってしまいます。明け方に葉が巻いている状態の場合、20mm程度の灌水を行ってください。

  3. 第三期(9月下旬以降)
    果実の成熟とともに糖度が高まり、果実肥大と減酸が緩やかに進大と減酸が緩やかに進を掛け、増糖効果を高めましょう。
品質向上対策

品質向上対策(2)

マルチ被覆

先述の水分管理を行う際にマルチ被覆は非常に効果的です。近年は秋季の雨が多く、水分ストレスが解除され、それまで高糖度で推移していたにもかかわらず、収穫時に糖度が低くなる問題が起きています。その為、よりマルチ被覆の必要性が高まっています。

マルチは降雨後か灌水後に被覆を行ってください。灌水設備がない園地やマルチの開閉が容易にできない園地では、収穫の2か月前を目途に被覆を行いましょう。必要以上の乾燥は、酸高や小玉果、樹勢低下の原因となります。

また、園地の排水が不十分の場合は、マルチ被覆を行っていても思ったような効果が得られません。毎年被覆を行っているが、糖度がなかなか上がらないよう な園地では、一度降雨後にマルチの下を確認し、乾燥していない場合は排水等を改善する対策を行ってください。

品質向上対策(3)

フィガロン乳剤

熟期促進や糖度向上に効果のある薬剤となります。注意点として、樹勢を低下させるため、弱っている樹には散布を控えてください。1度目の散布を済ませて いる場合、2度目の散布は樹勢や天候を考慮の上、決定してください。特に2度目の散布時期は雨量が少ない時期に当たりますので注意が必要です。散布のこと などで分からないことがあれば営農指導員にご相談ください。

フィガロン乳剤

摘果

図2を参考にし、着果負担により表面の果実を垂れ下がらせ、着果ストレスをかけた状態になってから、仕 上げ摘果を行ってください。また、仕上げ摘果の時期を遅らせるほど品質向上の効果があります。粗摘果と仕上げ摘果の間隔を出来るだけ長く空けられように表 2を参考に摘果計画を立てましょう。ただし、単純な摘果遅れにならないように注意してください。

摘果計画
摘果時期の差による収穫期のイメージ

日焼け果について

日焼け果は、夏期の高温と乾燥が続く場合だけでなく、摘果方法によっても発生の差が生まれます。日焼け 果に悩まされている方は、図2を参考に、表面の果実を摘果しない方法を取り入れてみてください。日焼け果が発生した場合は、10月以降に基部からハサミで 切り落としてください。日焼け果が発生する箇所は、常に日光が当たる場所になるので早期に落とすと、秋芽が発生する原因になります。

キウイフルーツ

今年は開花期に長雨が続いたため、花腐れ病や受粉不良が多く、着果量が少ない園地が多い傾向です。そのため、次に挙げる諸管理により、高品質な果実を生産しましょう。

土壌水分管理

根は、主幹から1mの範囲に7割が分布しており、張っています。梅雨明け後、乾燥が続く場合は、1週間に1・2回は定期的な灌水を実施してください。

新梢管理

棚下が暗いと、糖度不足やカイガラムシの繁殖、軟腐病の発生要因となりますので、不要な徒長枝や巻きツルを中心に除去し、棚下を適度な明るさに保ってください。

病害虫防除(8月上旬~)

果実軟腐病

ベルクート水和剤 … 1000倍

カメムシ類・キイロマイコガ

アディオン乳剤 … 2000倍