アグリnavi

今月の農作業(2月)柑橘・山椒

更新:2023年2月1日

柑橘

密植園の見直し

密植園では、作業性の悪化や病害虫の発生、日照不足による品質不良が起こります。間伐でも容易に空間を作ることができますが、まずは整枝・剪定で改善可能であるか確認を行いましょう。それでも改善できない場合には間伐を行ってください。
近年カイガラムシ類の被害が多くなっています。蜜植になっていることで農薬がかかりにくく防除がうまくできていないことも原因の一つと考えられます。整枝・剪定により樹形を整えることで品質や作業性の向上を目指しましょう。

カイガラムシによる被害

近年被害果が多発しています。

カイガラムシが寄生し、樹液を吸うことによるう樹勢の低下(図1)
※寄生量が増えると樹が枯れる場合があります。

カイガラムシの寄生で樹勢低下した樹(アグリnavi 2023年2月)

果実への寄生による品質の低下(図2)

カイガラムシに寄生された果実(アグリnavi 2023年2月)

カイガラムシの排泄物による「すす病」の発生(図3)
※すす病・・・葉などが「黒いすす」覆われたようになる病気で、生育が遅れ、樹が枯れる原因にもなります。

すず病の被害果(アグリnavi 2023年2月)

整枝・剪定の目的

2月以降から本格的な整枝、剪定のシーズンとなってきます。整枝・剪定の主な目的として次のようなことが挙げられます。

  • 樹勢の維持、向上
  • 病害虫の発生予防
  • 作業性の向上

整枝・剪定作業だけで様々な効果が期待できます。

整枝・剪定について

令和5年度産の着果は少なくなる予想です。整枝・剪定の時期を遅らせ、結果母枝(令和5年に着果する枝)を大切にしてください。

整枝

柑橘では主枝が2~3本で地面に対して垂直に立ち、亜主枝が水平であることが理想の樹形となります(図4)。この理想の樹形に近づけていく作業が整枝です。

理想の樹形(アグリnavi 2023年2月)

主枝が開いていると開いていると内向枝(樹の内側から発生した枝)や徒長枝(勢いよく伸びた枝)の原因にもなるため、まずは主枝を立てることが重要です(図5)。内向枝や徒長枝に着果させると浮皮や大玉、ニエが発生し品質がそろいにくくなります。主枝を立てることで、亜主枝が水平になり発芽・着果のバランスも良くなるとともに、樹形がコンパクトになることで樹冠に空間が生まれ密植園の改善にもつながります。

主枝が開くことで内向枝及び徒長枝が発生し樹形が乱れた樹(アグリnavi 2023年2月)

主枝を立てるためにヒモで誘引することも方法の一つです。主枝同士をヒモで誘引し理想の樹形を目指しましょう(図6)。

主枝をヒモで誘引した樹(アグリnavi 2023年2月)

山椒

剪定を行う理由

  1. 生産量の安定(樹勢の維持)
  2. 樹形づくり(作業効率の向上)
  3. 病害虫予防(品質向上)

剪定の時期

休眠期に入り落葉してから行ってください。1月に入るとほとんど落葉していると思いますが、秋芽の発生園では、落葉する前に剪定してしまうと、新たな秋芽が出る原因となるので注意してください。

小木から仕立てる

ほとんどの園地・樹で主枝は3本以上あり、樹形が複雑になっています。

種子の数が多い時の問題点とは?

狭いスペースの中で枝が多くなり作業効率が非常に悪くなります。また、枝が込み合うと病害虫の発生も多くなるため、主枝の数はできるだけ減らさなければなりません。
小木の段階から主枝の数を制限し、育てていくことが重要です。理想としては主枝の数は3~4本(図1・2)。主枝の伸ばす角度は40~45度がいいでしょう(図3)。

上から見た理想の樹形(アグリnavi 2023年2月)
横から見た理想の樹形上から見た理想の樹形(アグリnavi 2023年2月)

成木剪定の注意点

まず樹の切った後どうなるかを自分の理想とする樹形をイメージしながら行ってください(3~5年先の樹形をどうするか考える)。
図9のように、すり鉢状の樹形となるように、基本的には勢いの強い内向枝や徒長枝は切除します。ただし、幹や主枝の表面に光が当たりすぎると、日焼けにより剥皮が発生する恐れがあるため、ふところの細かい枝は切りすぎに注意してください。
重なり枝については作業効率が悪くなるので除去してください。また、切り返し剪定をした翌年は、その枝から出た枝を間引いてください。

主枝の先端、もしくは徒長枝を活かす場合、複数の芽がある枝でも、全ての芽が発芽することはありません。長い枝の場合、先端の芽だけ発芽し、間延びした枝になるため8~10個芽を残す程度で構いません。その時の注意点としては基本外芽で切除してください(図4)。※伸ばしたい方向がある場合はその限りではありません

枝を切るポイント(アグリnavi 2023年2月)

栽培面積が広い場合1本ずつ時間をかけて剪定していると、春までに間に合わないこともあります。そのため、まずは樹形を乱す徒長枝を優先的に剪定し、そのあと細かい剪定を行ってください。
毎年毎年、作りたい理想の樹形のイメージは変えてはいけません。その理想を変えずに剪定していくことで、おのずと理想の樹に近づいていくでしょう。

切り口について

切り口はできるだけ小さいほうが樹への負担が少なくなります。切り口が大きくなる場合は残す枝に沿って切り、面を取ってあげることで癒合が早くなります。また、その傷口の周りに徒長枝が出てきた場合、1本を残すとさらに癒合が早くなります。発生した枝は傷の大きさによりますが、2年目に剪定してください。切り口にはトップジンMペーストを塗布し、樹勢が弱い場合は春肥を多めに施用することで癒合が早まります。